三石から浦河への帰り道。
最近は絵笛のTさんの牧場と西舎の牧場の行き来だけだったから、町中を通るのも久しぶりだ。 やはり浦河、好きな町だな。カバリエがいる間に浦河に住むことは叶わなかったけれど。 まぁお互いの年齢を考えてもよっぽどのことがないと無理とは思ったけれど。 でも、カバリエはもうちょっと長生きするだろうと思っていたよね……。 おいしいパンやさん「ぱんぱかぱん」の前を通ったのがちょうど開店の10時だったので寄る。 私が行く時間は、パンが残っていることないから、ずらりと並ぶパンが嬉しい! レジに、佐島牧場さん支援のバッジが売られていた。これまで、カバリエのためにほかの余生馬の支援はしない、と決めていた。自分にいつ何が起こるかわからないから、他の馬に払ったことで金銭的に余裕がなくなり、カバリエを守れなくなったら本末転倒。(前も書いたけど例外はある)。 もうその必要がないんだから、とバッジを手にした。 午後から帯広に戻って出勤した。今はテレワークで、週に1度だけ出勤する。私はそれがきょう、木曜日だった。 とりあえず「不幸があったので午前は会社にいません」と同僚に伝えると、必要以上に心配されて申し訳なかった。不幸があったことには間違いないのだけど、突っ込まれると答えにくい。 とりあえずはテレワークで良かった。 かなり残業して、遅くにご飯を食べ、夫に三石の話をした。 カバリエが亡くなったことをお世話になった方々に伝える。その返事を見て泣けてしまう。 お風呂に入ってほっとしたら、急に寂しさが押し寄せる。もっとカバリエと遊びたかったなぁ。もう行ってもいないのか… 寂しい日々はしばらく続いた。時間が解決してくれるだろう。まだ先だろうけど。 昔「馬の悲しみは馬で癒やす」という話を友達とよくしていた。好きな馬が予後不良になった後、など。でもカバリエの悲しみを癒せる馬はカバリエしかいない。 「この日」の話はこれで一旦終了です。 これからは、その後思ったことなどを少しずつ綴っていきます。
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by b_cavalier
| 2021-08-28 22:28
| ボヘミアンカバリエ
Fさんが国道を右折する。おお、ここか!ここだったのか。農済の施設があるなとは思っていたけれど、焼却場だったのか。
馬運車は、直接焼却炉と思えるところに入っていく。中にいた担当の人が、チェーンをカバリエの後ろ足につけて引き上げ、静かにカバリエを下ろす。 Fさんが担当者と話している。その間に、横たわったカバリエの、濡れた頬に最後のキスをする。 Fさんは「焼却炉にはこのまま入らないので、切って入れるんです。苦手なら見ないほうがいいです」と私に伝え、牧場に帰っていった。 カバリエを引き取ると決めた時、最後まで見届けようと思った。 でも感覚的に、ここが最後だろう、と思った。処理からはもう担当者の仕事になる。人間だってそうだろう。 シャッ、シャッ、と鎌を研ぐ担当者に、よろしくお願いします、といってその場を離れた。シャッターがゆっくりと降りていった。 それから下の事務所で受付をする。 H先生が連絡をしてくれていて、名前を言うとすぐ書類を渡された。 ボヘミアンカバリエ、と馬名が書かれていて、今更ドキッとする。 死因には、「功労馬で安楽死」と書かれている。それ以外の部分を埋めていく。 26歳、と書いてから25歳10ヶ月と書き直したが、「ヶ月」というのはこれは仔馬用の欄か? Fさんには別れ際「焼却代、7万くらいかかりますから…」と言われた。Tさんらにもいろんな人からも「結構高いから」と。 まぁ、預託代を考えれば。それにしても6万8千なにがしと細かかった。 「骨ってもらえますか?」と聞いてみる。 担当者に言えば不可能ではないらしいが、焼き終わるのがいつになるかわからない。 どこの馬の骨かわかっていても、でも骨を持つって聞かないよなぁ。 たてがみとしっぽがあれば、十分。というか、もう思い出だけで十分なのだ。 焼却炉の方を見ると、煙が上がっていた。もう、荼毘に付されているのだ。はやいなぁ。 隣に碑を見つけたので、手を合わせる。獣魂碑。ありがとう。 担当者は、切ったり、内部の状態を説明できる知識があるということは獣医師なのか。 ホースで床に水を流す音が聞こえた。淡々と、処理がなされていったのだ。それはカバリエをかたどっていたもの。 今、カバリエはどこにいるんだろう。 #
by b_cavalier
| 2021-07-22 09:28
| ボヘミアンカバリエ
朝7時。日が昇り、樹氷がきらきらと美しかった。
カバリエと一緒に見る景色。 シートの中に入ってカバリエを確認すると、まだ少し、温かさが残っていた。 なので、すぐにメガネが曇った。ほっとした反面、かえって切なくなる。 目は知らないうちに閉じていた。 ジョンオージは1頭で、いつもと違う放牧地に放たれていた。不思議そうな顔に見えた。 Fさんの元気な繁殖牝馬たちと会話をしていた。 これからはオージが心配だよ…… 寒いので運動がてら馬房まで歩く。 カバリエの馬房はふかふかだった。 また立ち上がって、戻ってくるかもしれないからふかふかにしていたとのこと。 寝藁片付けますか、と言ったがこのままオージの馬房に使ったりするので、このままにしておくらしい。 Fさんが、馬運車の箱(トラックの上に載せる馬を載せる部分…でわかるかな)だけを置いて戻ってきた。 昨日の怪我が響いているTさんは自分で「使い物にならない」といって、近くのKさんを呼んだ。 Kさんは手早く、カバリエの頭と前脚、後ろ足をロープで縛った。当たり前だけど慣れている。 表には出ないけれど、牧場ではこの作業が頻繁に行われているんだと気づく。Fさんも手慣れていた。 それからトラクターに載せようと思ったら、寒すぎてT家のトラクターが動かない汗 Kさんが家から持ってきてくれるという。何からかにまですいません… それにしてもKさんトラクター使いも慣れてんな!動きが早い早い。 2人がかりで、ローダに載せて運ぶ。当たり前だけど亡骸で、そのように処理しながら、馬産地の日々は続いていく。 「あーずれたー」とかいいながら、馬運車の作業にバタバタ。すぐに出発する。 シートに包まれたカバリエの亡骸の後ろについて、海沿いを走る。 とても天気がよくて、きらきら海が輝く。カバリエとの、最初で最後のドライブだ。 今まで、移動に付き合ったこともないし、一緒にどこかに行く…ということはなかったな。 #
by b_cavalier
| 2021-07-04 16:22
| ボヘミアンカバリエ
注射を打って少したつと、きゅっ…と体を小さく折り曲げた。それから体を伸ばし、最近見たことのないような、脚の動きを見せた。 カバリエはサラブレッドだったんだな、と思った。「最後の走りだね」と言った。カバリエ、元気だなぁ! 少しずつ静かになった。"その時"がいつだったかはわからない。まだ温かいカバリエにずっと触れていた。 「伝えなくてはいけない」とは夫も思っていて、何枚か撮影をしていた。 「物書きとカメラマンなもので、すいません」。注射はなんという薬なんですか、など取材。 死に至らせる薬剤はパコマ、という。昔よりは馬を苦しませないための技術が進歩しているわけだから、ベストの選択なのだろう。 Tさんも、この日忙しかったFさんも見守っていてくれた。 獣医師が帰り、さ、明日の朝、どのように運ぼうという話になる。 Tさんのところには馬運車がないから、引き取りに来てくれる門別しかないのだろう。でも正直、見送りたい、という思いはある。 たまたま明日種付けがあるFさんが、馬運車を借りていた。「僕いいですよ、午前なら時間あります」。 最後まで、いろいろな方に協力してもらった。ありがたい。 夫は先に帰っていった。私はどこでも寝られる人間だが、この日は初めてTさんの家に泊めさせてもらった。 感覚のなくなった足が、お風呂でようやく温まった。 それからは、今までのことを思い出して全く寝られなかった。 最後までしっかりやらないと、という責任もある。興奮していた。2、3時間は寝ただろうか。 少しずつ空が明るくなる。寒い。携帯を見ると気温が-15度。おいおい帯広か。 窓は霜が降りていて、外が全く見えない。 この寒さなら、カバリエはどちらにしろもたなかっただろう。 #
by b_cavalier
| 2021-06-28 22:06
| ボヘミアンカバリエ
夫が到着した。「今向きを変えたんだよね」という話をする。「向き変えたくらいで弱ってちゃだめだわ」「そうなんだよね」。
また、前回の辛い時のように呼吸が荒くなった。体は汗をかいている。 悪い時の波、が来ている。次の「いい時」は来るのか? 寒い中、それを待つ必要はあるのか? 「楽にさせてあげたほうがいいんじゃないの」。「私もそう思う」。 元気になったとして、また寝たら起き上がれないだろう。 変なタイミングで倒れて、の繰り返しだ。 というよりは、もうこのまま息絶えるような気がする。それならば今楽にしてあげるのが最善だ。 「獣医さんを呼んでください」。 午後9時、Tさんに告げた。結局勤務外ともいえる変な時間に呼んでしまった。競走馬に比べ、緊急というわけでもないのに申し訳ない。 10分もしなかっただろうか。すぐに荻伏からH獣医が来た。 決断から、そう時間はない。時間があっても困る。 獣医さんの車にちょっとびびるカバリエ。 痛くなくしてくれるんだからいいでしょ!これでまた元気になれるよ~などと話しかけるが、言葉のわからないカバリエだから、もう観念しているのだろうか。そうは思いたくなく、ずっと話しかける。怖くないように。そばにいるから大丈夫だよ、もう辛くないよ。痛くないよ。 ライトの明かりだけを頼りにして、カバリエの首筋をすっと触ってから、また車に戻り、注射器を持ってきた。 無言ですぐに注射をした。……って早ぇなぁオイ!!!(汗)と思ったら、まず最初に鎮静剤を打ったらしい。 それから少し経って、どぎつい色の薬が入った注射器を持ってきた。 「暴れることもあるから気をつけてください、…驚くかと思いますが」 「はい、聞いたことがあるから大丈夫です。」 安楽死の際に暴れることがある、というのはよく聞く話だ。というか、書いてくれた人がいたからだ。 「馬の瞳を見つめて」という名著がある。渡辺牧場の渡辺はるみさんの本。 この2日前に、渡辺牧場でも1頭の余生馬が亡くなっていたと知る。他の余生牧場でも聞いたし、この時期の気候の変化というのは高齢馬には堪えるのかもしれない。 私も伝えなくてはいけない。 #
by b_cavalier
| 2021-06-21 21:22
| ボヘミアンカバリエ
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